気になるお酒 5
☆梅乃宿(うめのやど)
『竹翠』の竹綱本店の遺族の間では、親族会議まで開いてついに役所の廃業の勧告を受け入れることを決定し、存続支援の運動など起こすと遣族を返って苦しめるかもしれないという竹綱家に近しい関係者からの話も聞き、一応右のことは断念した。
そうしたある日、故竹綱障郎蔵元と親しく、奈良県下の剛き酒の名人で東京の全国大会でも優勝した、愛酒家の原田勝弘氏から連絡がありました。
竹綱家の親戚で奈良の北葛城の『梅乃宿』が、『竹翠』の使っていた赤磐雄町の田と契約して、おなじ酒米で吟醸づくりに本腰を入れている、一度その味を刷いてみないか、というのだった。
『梅乃宿』の存在を知ったのは、右の『竹翠』の縁もあってのことでした。
『梅乃宿』の吉田武司蔵元は阪大醸造学科卒、奈良の酒造組合会長も勤めた県酒造界の重鎮で、故竹綱蔵元の従兄に当ります。
その酒蔵の位置も、南河内の旧『竹翠』の蔵とは葛城山を挾んでちょうど東と西の反対側になります。
かねがね多糖乏酸の自家製酒どころか、灘、伏見に挾まれた多くの県下の酒蔵が桶売りの安易に流れて、良心的な研究的な酒づくりの情熱を失いがちなのを肪甲斐ないと感じられ、従弟竹綱の吟醸への執念に刺戟されてもいました。